2006年9月25日月曜日

王様の耳はロバの耳

「王様の耳はロバの耳」というのは、ミダス王の耳がロバの耳だったのを、秘密を知る床屋が、地面に穴を掘って叫んだ結果、生えてきた葦が風に揺れてささやいた、という物語の一節です。誰でも知っている話だと思いますが、ミダス王の耳が何故ロバの耳なのか・・・。

それは、ミダス王が関わった“事件”を求めて、時をさかのぼる必要があります。
ある日、ミダス王の領地にお酒の好きなシーレーノスという神様がやって来て、酔っぱらって寝込んでしまいます。ミダス王は彼を歓待し、10日間のあいだ宴を開きました。11日目にシーレーノスを見送り、彼の弟子の神様であるデュオニューソスのもとに返します。これに感激したデュオニューソスは、お礼に、ミダス王に何でも望むものを1つ与えると言います。
ミダス王は喜んで、「では自分に触れるものが全て黄金に変わるように」との願いを申し出ます。デュオニューソスは、内心「もっと賢い願いをすればいいいのに」と思いますが、ミダス王の願いを叶えてあげます。
ミダス王は、自分の願いが叶ったか確かめるため、林檎に手を触れます。すると、林檎はヘスペリスの園から持ってきたような見事な黄金の林檎に変わってしまいます。喜んだ王は、早速宴会を開くことにします。しかし、食べようと手に持ったパンはたちまち黄金のパンに変わってしまいます。飲もうと思ったワインは黄金の滴に・・・。ここに至って、王は黄金に囲まれながら餓死してしまうという危機に瀕していることに気づきます。
慌ててデュオニューソスに祈り、この呪いを解いてもらうよう懇願します。デュオニューソスは慈悲深い神様でしたから、ミダス王の願いを聞き入れ、パクトーロスの川に行って、その手を洗い清めるように言います。
お告げに従って、ミダス王がパクトーロスの川で手を洗うと、川の砂が金に変わり、彼の呪いは解けたのでした。ちなみに、パクトーロスの川で砂金が取れるようになったのはそれ以降の話です。
この事件以来、ミダス王はすっかり富とか権力が嫌になり、野原で自然と一緒に住まうようになりました。そして、パーンという野原の神様を信仰します。パーンは外見は醜い姿でしたが、葦笛の名手でした。ミダス王はパーンの葦笛が大好きです。
ところがある日、パーンが、竪琴の名手であるアポロンと腕比べをしようと言い出します。アポロンはそれを受け入れ、審判に山の神トモーロスが選ばれました。野次馬も集まってきます。まずパーンの葦笛が披露されます。その美しい音色に、ミダス王は大喜びです。今度はアポロンの番。アポロンの竪琴は、森の木々をなびかせるほどのもので、その見事さに、トモーロスは直ちにアポロンの勝利を宣言します。しかし、納得のいかないミダス王は一人異議を唱えます。それを聞いたアポロンは、「お前の耳はロバの耳にふさわしい」と言って、ミダス王の耳をロバの耳に変えてしまいました。
それ以来、ミダス王の耳はロバの耳になってしまったのです。
○今回の星座
りゅう座
北の空にある星座。黄金の林檎があるヘスペリスの園を守っている。ここで登場するデュオニューソスは、お酒の神様。パーンはヤギの足と角を持つ。父親はヘルメス。パーンの愛したニンフ(妖精)が彼を嫌って逃げ、最後に葦になった。それ以来、パーンは葦笛を得意とするようになる。ちなみに、パニックという言葉はパーンから来ている。
○関連項目
アポロン
パリスの審判
ゴルディアスの結び目

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